発達障害は、神経発達に関連する継続的で困難な問題を指し、個々の発達領域での障害が見られます。大きく分けて3種類に分けられます。精神遅滞・広汎性発達障害・特異的発達障害です。そして主なカテゴリーには、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害、発達言語障害、感覚統合症候群、発達協調運動障害(DCD)などがあります。これらは独自の特性を持ち、例えばADHDは注意力不足や多動性が、ASDは社会的相互作用の困難や反復行動が顕著です。診断は専門家による評価に基づき、適切な支援や治療が必要です。発達障害はしばしば複合的で、よく似た特性が現れるものがあります。神経症やgiftedとの分類基準をみてみると特性に重複する点も多く専門家でも見極めが難しいものもあります。また医学的には明確な診断基準がないものなど様々です。
一般的には個別の症状や特性を理解することが重要です。治療や支援の進歩には最新の研究と診断基準が欠かせず、これに基づいたアプローチが有益です。総じて、発達障害は個々の違いを尊重し、包括的かつ個別化されたアプローチで取り組む必要があります。また、診断は医師によって行われます。
広汎性発達障害は大きく分けて以下5種類に分類されます
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、神経発達の障害で、主に社会的相互作用とコミュニケーションの困難さ、反復的な行動や興味の狭さなどが特徴です。ASDは広範で、症状の重さや特性には個人差があります。診断は主に行動観察と発達の歴史に基づき、精密な評価が必要です。
ASDの主な特性の一つは、社会的な相互作用の難しさです。ASDの人々は感情や非言語的なサインの理解が難しく、コミュニケーションの基本的なスキルに課題を抱えることがあります。また、反復的な行動や興味の強い特定のトピックに執着する傾向があります。ASDの原因は複雑で、遺伝的、環境的な要因が絡み合っていると考えられています。脳の発達に関連する多くの遺伝子が関与しており、胎児期から幼児期初頭の脳の発達に影響を与える可能性があり親のしつけなどは関係ないことが証明されています。
早期の干渉や治療が重要であり、行動療法や言語療法、特別支援教育などが有効なアプローチとされています。家族のサポートも欠かせず、療育の一環として家庭環境の調整や理解が必要です。
レット症候群は、遺伝的な神経発達障害で、主に女性に見られる稀な疾患です。MECP2遺伝子の変異が原因で、脳の発達に異常を引き起こします。通常、生後6~18か月頃に発症し、これまで健康であった発達が急速に停滞または後退します。
主な特徴には手の巧緻性の喪失、コミュニケーションの障害、社会的なスキルの喪失、局所的なステレオトピーの発現などが含まれます。また、共同注意や手の振動など、独自の行動パターンがみうけられます。レット症候群は女性に多く、男性の生存に関連するX染色体の不均等が一因と考えられていますがまだ解明はされていません。この変異は全身の機能に影響を与え、自立歩行の喪失、発話能力の低下、手の巧緻性の喪失などが進行的に悪化します。治療は支持療法が主で、物理療法、言語療法、聴覚療法などが含まれます。個々の症状に合わせた適切なアプローチが求められ、継続的な医学的サポートやリハビリテーションが必要です。
小児崩壊性障害は原因不明であり、遺伝的な要因や神経学的な変化に関与している可能性があります。この障害は非常にまれ神経発達障害であり、通常、正常に発達していた子どもが急激に機能の喪失や後退を経験する症候群です。
発症時期:通常、小児期初期(2~4歳)に発症する。発症前は比較的正常な発達を示していた子どもが、急激に能力やスキルを失う過程が特徴的。
言語とコミュニケーションの喪失:以前は言葉を話していた子どもが、単語やフレーズを使用できなくなることがあります。
社交的スキルの減少:突然、他者との関わりを避けるようになることが見受けられる。
運動スキルの喪失:今まで出来ていた日常生活のスキルや活動が困難になることがあります。
興味と関心の制約:以前は興味を示していた活動や遊びに対して興味を失うことがよく見られます。
自己照顧能力の低下:すでに獲得していたはずの自己照顧能力が失われることがあります。
非定型自閉症は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の一形態であり、典型的な自閉症の症状が一部現れ、または症状の程度が軽減している状態を指します。
社会的相互作用の特徴:社会的な相互作用に課題を抱えますが、一般的なコミュニケーションの障害が相対的に軽微であることがあります。
興味や行動の制約:特定の興味や独自の行動パターンが見受けられ、これが非定型自閉症の特徴の一部です。これらの興味や行動が通常の範囲を逸脱していることがありますが、それが自閉症全般の特徴ほど厳格ではありません。
言語の発達:言語の発達にもばらつきがあります。典型的な言語発達が見られる一方で、他の人は言語の遅れや異なるパターンを示すことがあります。
感覚処理の差異:過敏症状や鈍感症状が見受けられ、これが行動や日常生活に影響を与えることがあります。
認知機能の異常:学習能力や注意の持続力に関して、他のASDと比べて異なる特性が見られることがあります。
非定型自閉症は非常に個体差が大きく、一般的な特徴が全て当てはまるわけではありません。
アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の一部で、一般的な発達の遅れが見られないが、社会的な相互作用やコミュニケーション、特定の興味・行動に特有の特徴がある状態です。社会的相互作用の特徴:アスペルガー症候群の人々は、社交的であることが難しく、他者との自然なコミュニケーションに苦労することがあります。非言語的なコミュニケーションや感情の読み取りが難しく、適切な表現が難しいことがあります。
興味と行動の制約:特定の興味や関心が強く、それについて深く詳しい知識を持つことがあります。また、ルーチンや独自の行動パターンに執着し、それを維持することが一般的です。
言語発達:言語発達には問題がないか、高い言語能力を示すことがあります。ただし、コミュニケーションの文脈での言葉の使用や理解には難しさが見られることがあります。
非言語的なコミュニケーション:目の視線やジェスチャー、表情の理解や使用に課題が生じることがあります。相手の感情や意図を正確に理解することが難しくなることがあります。
運動協調性の課題:運動協調性に問題が生じ、運動技能の発達に遅れることがあります。一般的には、体のしなやかさや運動協調性に苦労することが見られます。
ルーチンと予測可能性:環境の変化や予測不能な状況への適応が難しく、一貫性のある環境やルーチンを好みます。変更に対する適応が難しいことがあります。
アスペルガー症候群の人々は高い知的能力を持つことがあり、その分野での専門的な才能を発揮することがあります。適切なサポートや理解により、彼らの強みを活かし、社会的な関係を築くことができます。
学習障害は、一般的な発達の範囲内であるにもかかわらず、特定の学習領域で困難や遅習得に時間がかかることがあります。これは主に言語、読解、算数、記憶、注意、視覚または聴覚処理などの学習スキルに関連しています。
●ディスレクシア (読み書き障害):読み書きにおいて困難を経験する障害で、文字の認識や音と文字の対応に問題があります。読解力が低く、文章の理解が難しいことが特徴です。
●ディスカルキュリア (計算障害):数学や計算に関する困難を伴う障害で、基本的な計算や数学の概念の理解が難しいことがあります。
●発達性協調運動障害 (DCD):運動技能の発達が遅れ、協調性や運動の制御に課題が生じます。筆記やスポーツなどの運動活動が困難な場合があります。
●注意欠陥・多動性障害 (ADHD) との併存:学習障害は注意力の問題や過活動性と併存することがよくあります。この場合、注意が続かず学習に支障をきたすことがあります。
●言語障害:言語の発達が遅れ、言葉の理解や表現に困難が生じることがあります。コミュニケーションの障害も含まれる場合があります。
●視覚・聴覚処理障害:視覚や聴覚の処理に課題が生じ、情報の取得や理解に困難を経験することがあります。
学習障害は個々の特性や症状によって異なり、早期に発見されると適切な支援や介入が行われることが重要です。学習障害は一生続くものではなく、適切な支援とともに個々の能力を伸ばすことが可能です。
ADHD(注意欠如/多動性障害)は、神経発達の障害で、特に子ども時代に注意力、多動性、衝動性に関する困難が中心です。
●異なる注意の形態:ADHDの子どもたちは、継続的な注意の維持が難しく、簡単に外部の刺激に引き寄せられることがあります。また、課題に対して興味を持ちにくく、切り替えが難しい傾向があります。
●多動性:静座が難しく、座っているときでも手や足を絶えず動かす、あるいは場所を移動する傾向があります。授業などでの静かな作業が難しいことがあります。
●衝動性:衝動的な行動や発言が見受けられ、思いついたことを即座に行動に移すことがあり、計画性や先見の明が不足することが特徴的です。
●学業への影響:学習において、課題の計画や組織が難しく、宿題や試験の準備に苦労することがあります。注意散漫さが学業の成績に影響を与えることがあります。
●社交的な関係の課題:社交的な相互作用において、衝動的な言動や注意力の乱れが友情や対人関係に影響を与えることがあります。他者とのコミュニケーションのルールが理解しにくいことがあります。
●感情の調整の困難:感情の変動が激しく、フラストレーションや怒りの爆発が起こりやすいです。感情のコントロールが難しく、他者との衝突が増えることがあります。
●時間の感覚の課題:時間の経過に対する感覚が不安定で、時間を適切に管理することが難しいことがあります。
●運動協調性の課題:運動技能が低く、スポーツや運動において同年齢の子どもたちと比べて苦労することがあります。
コミュニケーション障害は、言語や対人関係の発達において問題を抱える状態を指します。
●言語の遅れや発達の不足:同年齢の子供たちと比べて適切な言葉の使用や理解が難しいことがあります。文法や語彙の使用が制約されていることが見られる場合があります。
●コミュニケーションの理解の難しさ:ジェスチャーや表情、視線などの理解が難しいことがあります。相手の感情や意図を適切に理解することが難しい場合があります。
●対人スキルの不足:、他者との適切な関わりが難しいことがあり友情の構築や維持に課題を抱えることがあります。
●非言語的なコミュニケーションの不足:ジェスチャーや表情、体の動きなどの非言語的なコミュニケーションが十分でないことがあります。
●興味・関心の制約:特定の興味や関心が狭く、他人との共有するトピックが限定的であることがあります。
●コミュニケーションにおける反復行動:同じ言葉やフレーズ、質問を繰り返すなどの反復行動が見受けられることがあります。
●固定された興味やトピック:特定の興味や話題に対する執着が強く、他者との会話がそのテーマに偏ることがあります。
●変化への適応の難しさ:突然の変化や新しい状況に適応することが難しく、新しい環境や人との接触に不安を感じることがあります。
運動技能障害は、運動技能の発達が遅れ、または妨げられる状態を指します。この障害は、手や足の動き、バランス、協調性などの基本的な運動スキルの発達に影響を与えます。
●基本的な運動の遅れ:走る、跳ぶ、キャッチするなどの基本的な運動が同年齢の子供たちと比べて遅れていることがあります。
●手の巧緻性の低下:細かい動きや手先の巧緻性が低いことがあります。文字を書く、ボタンを留めるなどが難しいことがあります。
●運動計画の難しさ:複雑な動作や運動の順序を計画し、実行することが難しいことがあります。例えば、階段の上り下り、靴の紐を結ぶなど。
●バランスの問題:立つ、歩く、走るといった基本的なバランスの維持が難しいことがあります。
●運動の協調性の低下:複数の動きを同時に行うことが難しく、協調性が低いことがあります。
●スポーツや体育の苦手:スポーツや体育の授業での運動やチームスポーツが苦手であることがあります。
●日常生活の運動:洗顔や歯磨きなどの日常の身辺動作が難しいことがあります。
●運動の自信の低下:運動が苦手であるため、他の子供たちと比べて自己評価が低いことがあります。
一般的には他の発達障害や学習障害と併存することがあります。運動療法や特定のスキルを向上させるプログラムを受けることで機能向上がはかれます。
感覚統合症状は、個々の感覚が適切に統合されない状態で、通常の活動や環境に対して異常な反応を示すことがあります。感覚統合症状は感覚統合障害や感覚統合過敏(SPS)などとも呼ばれます。
●視覚感覚
過敏症: 明るい光や特定の模様に対して過敏で、適切な対応が難しいことがあります。蛍光色や幾何学模様など
低感度: 視覚的な刺激に反応が鈍いことがあり、物事を見落とすことがあるかもしれません。
●聴覚感覚
過敏症: 騒音や突発的な音に敏感で、適切に処理できないことがあります。人の怒った声など
低感度: 聞こえにくい音に気づかないことがあり、他の人が気になる音に対して無反応であることがあります。
●触覚感覚
過敏症: 衣服のタグや縫い目、さらには他人の触れ方に対して敏感で、不快感を覚えることがあります。肌ざわりにこだわる傾向があります。
低感度: 激しい触れ方や刺激に十分な反応がないことがあり、物の温度や触感を十分に感じ取れないことがあります。
●嗅覚感覚
過敏症: 特定の匂いに対して敏感で、嫌悪感や不快感を示すことがあります。柔軟剤や芳香剤で気分が悪くなるなど。
低感度: 他の人が感じるような匂いに気づかないことがあります。
●味覚感覚
過敏症: 特定の味や食材に対して嫌悪感を示すことがあり、食事の選択が制限されることがあります。
低感度: 強い味覚が必要で、濃い味付けを好むことがあります。
●運動感覚
過敏症: 特定の運動刺激に敏感で、回転する遊具や速い動きに対して不快感を示すことがあります。頭痛や吐き気がすることがあります。
低感度: 自分の体の位置や動きに対する理解が不足しており、バランス感覚が不安定であることがあります。
